まず、前提として、地方議会では、首長の提案した予算に対して賛成多数で「可決」、反対多数で「否決」のほか、「修正案」を出し、一部を修正したうえで可決する「修正可決」、予算案の再提出を求める「組み換え要求」という議決があります。
「組み換え要求」は、実は法的拘束力はありません。首長は「撤回、再提出」を拒否できますし、再提出する場合でも、動議の内容を絶対に反映しなければならないというものではありません。しかし、組み替え要求の動議の可決は予算がそのまま通らないことを意味するので、首長は何らかの対応を行うのが普通です。
さて、今回の市議会では、予算委員会で一般会計予算が「否決」されるという事態になりました。本来8年前にすべきだった体育館の耐震診断予算の計上をめぐって紛糾し、他にも様々な問題が指摘されました。私も、ごみ収集業務の大幅な人員減、生活保護CWの不足、職員のメンタルケア予算の削減などを理由に反対しました。
そして14日の朝、本会議直前に会派「改新高田」から組み替え要求の動議を出すことが伝えられました。組み換え動議の内容は、「ごみ収集職員の削減の撤回」「不足する生活保護課CWの増員」となっていました。先述の通りこれは、予算委員会で私が強く指摘した内容です。
正直言って戸惑いました。予算に賛成した会派から、予算に反対した私の意見に沿って予算の撤回、出し直しを求める提案が出されたのです。私、そして共産党議員団は困った判断を迫られました。自分の主張が予算に反映する可能性があるのですから、賛成し成立させることはチャンスです。
しかし、もしこれが「修正案」であったならば、自分の意見が取り入れられていようと賛成することはできません。「修正案」ならば、修正箇所以外については予算に賛成することになります。私が指摘した問題点はこの2か所だけではありませんし、他会派からの指摘にも納得できる点がありました。
そうした予算委員会での議論の結果を無視し、自分の意見が数か所反映されたからと言って予算に賛成するのでは、党利党略の誹りを受けることになります。ですが、「組み換え動議」では予算の組み換えはあくまで市長が行うもので、他の指摘、要望事項も取り入れられる余地があります。
もう一つの懸念は、予算を「否決」した場合に、必要経費だけを入れた「暫定予算」になる可能性がありました、その場合、今回含まれた「アピアランスケア」「産婦検診」などの事業も4月実施できなくなります。
暫定予算は市民に迷惑をかけることになります。一義的には首長の責任ですが、反対し否決した側も、市民のお叱りを受けることは免れません。私たちはそれも覚悟のうえで「反対」の態度をとっていますが、市長が自ら撤回し、月内に出し直しすることで暫定予算をひとまず避けられるのならその方が良いです。
そうしたことを踏まえ、議員団で議論し、党にも相談の上、本会議に臨みました。
私は動議に対する質疑を行いました。原稿なしです。「この動議は修正案でなく組み換え動議で、市長に組み換えを求めるものであること」「自分の意見が入っているからと諸手を挙げて賛成するわけにはいかない。この動議は、予算の再提出において他の修正をすることを妨げるものではない」を確認しました。
確認の上で、共産党議員団は賛成として、私が賛成討論を行いました。「この2項目に関わらず、市長は予算委員会の議論を踏まえて予算の再提出を」と求めました。結果は、改新高田、共産党が賛成し、絆・日本維新の会、公明党が反対で、賛成多数で可決となり、市長が予算の撤回を表明しました。
反対討論はありませんでしたが、絆・日本維新の会および公明党が、予算に反対しつつ予算の撤回を求める動議に反対した理由は、彼らの指摘は「予算が過大であり、もっと精査して歳出減額を」という方向でしたので、増額補正になりかねないこの動議には賛成できないということだと思います。
組み換え動議に反対した側にも道理があったことを申し添えたいと思います。
予算案は一旦撤回のうえで、25日までに予算案を再作成し、臨時議会を行うこととなりました。今のところ3月29日の予定です。どのような予算案となるか注視し、改めて賛否を決めたいと思います。