2013年11月25日

特定秘密保護法の問題点B本当に秘密保護を考えるなら

秘密保護法の問題 3回目です。
今回で一区切りとします。ここでは、「それでも秘密保護法は必要では」ということについて
補足的に論じたいと思います。

@本当に機密保持を考えるなら

 漏えいすることが重大な結果をもたらす「国家にとって重大な機密」というものが存在するならば、例えば原発の警備に関する情報などがそれにあたると考えると、守る方策は(1)絶対的に守るべき機密の範囲を最小かつ明確にして、そこへのアクセス権者を制限し、徹底的に隔離する。(2)情報の内容や所在をランダムに変更して、流出のリスクを小さくする、というものが考えられます。
 機密の範囲が大きくなり、アクセスする人数が増えれば増えるほど、機密の保持・管理は難しくなります。そして、いかに厳重なプロテクトを行っても、一か所に長くとどめ置いたり、内容が何年間も変わらなければ、いずれ突き止められてしまう恐れがあるため、その所在や内容は適宜変更・更新しなければ意味がありません。
 今回の秘密保護法はこのような対策を強化するものではなく、逆に巨大で範囲不明確な秘密を国家の行政機構の中に作ろうとするものです。これは逆に、本来守るべき秘密までも適切に管理できなくなる危険性をはらむものです。

 また、「法で守られているから」「罰則があるから」とかえって行政機関側の管理の質が落ちるのではないかという指摘もあります。戦前の日本でも、重要な情報は中枢から流出していました。戦争の転機となった「ミッドウェー海戦」も、作戦目標を事前に米軍に知られており、その原因は海軍中枢の情報管理のゆるみや暗号改訂の遅れが指摘されています。
 重要な機密を保護するのであれば、機密の規模は小さく、関与する人数も少なく、首相や閣僚の目が届く範囲に抑え、関与するごく少数の人間(責任ある上級公務員や特定の民間人)に対して十分な説明と管理徹底を行い、場合によっては責務に応じた処罰も明示して、徹底的に情報のプロテクトと管理や更新を行うべきなのです。

A巨大な「機密」こそ平和と安全をおびやかす

 「機密が知られて国が潰れたら元も子もない、安全保障のための機密は国民の知る 権利に優先する」という論法があります。
 しかし、国そのものの存続を揺るがすような秘密というものが、一体どれくらい存在するでしょうか。そのような秘密は、上に述べたような方法での管理を強化するべきであり、巨大な秘密をつくってその中に隠すような性質のものではありません。
 「ただちに国を揺るがすものではなくても、防衛力や外交に関わる情報は隠さなければ日本にとって不利な結果を生み、国を揺るがしかねない。だからその分野の情報は国民の知る権利の範囲外だ」という意見もあるでしょう。しかし私は、巨大な秘密の存在こそ安全保障を揺るがし、戦争につながるものであると考えます。
 経済上、あるいは外交上の対立が紛争となり、紛争が戦争へと発展していく過程では、相手国に対する誤解や誤算がつきものです。相手国の考え方や力量を正確に把握できていないからこそ、話し合いで解決するチャンスを逸し、偶発的な衝突から全面戦争へなどということにつながっていきます。
 第二次大戦のうち日米戦争について、戦争は回避されるだろう、日本は開戦に踏み切らないだろうという楽観論が根強くあったにもかかわらず全面戦争に至ってしまったのは、日米双方の首脳がお互いの考えを正しく把握できず相手の軍事力を誤算し、その積み重ねが外交的解決のチャンスをことごとく潰したのだ、という見解があります。紛争が、相手に対する悪意や野心を持っている場合でも、相互に相手の考え方や力量を正しく把握できていれば、コストもリスクも高い戦争という道は、可能な限りそれを避けようとするでしょう。

 「疑心、暗鬼を生ず」といいます。知らされないことは不信と疑い、デマや憎悪へと容易に発展するものです。これは国内の問題に対しても同じです。相手から日本への誤解や誤算を生まないために、秘密は可能な限り小さくして、積極的に考え方や力量を見せるべきであると考えます。
 「敵に手の内を知られてしまっては防衛も外交もできない」と反論されるかもしれませんが、外交は日本と紛争相手国の間だけで行われるものではなく、多くの国際社会の視線のもとで行われます。特定秘密保護法案では、安全保障にかかわる分野として自衛隊関係だけでなく、核や原子力も広く秘密指定されることが想定されています。自衛隊に関して広範な秘密が存在し、また核についても秘密、これは「日本は他国を攻撃しうる核兵器を保有する意思を持っているのではないか」と疑念を抱かせる、すくなくともそう言いがかりをつける材料になってしまいます。注意すべきは、現代の戦争の多くは「自衛」を口実に行われるということであり、「日本が我が国を攻撃する意図を有しており、それを未然に防ぐために我が国は先制攻撃する」ということが起こりうるということです。
 逆に、日本は核兵器開発の意図がなく、また敵国を攻撃する軍事力を保有していないことを国際的に明らかにしていれば、相手国は「自衛のため」という武力行使のカードを失うことになります。そして日本は「攻撃の意図なし」という国際的にアピールする材料をえることになります。また、日本が防衛力を秘匿すればするほど、それは抑止力になるのではなく他国にさらなる軍事力強化の口実を与え、かえって日本の安全保障を脅かすことになります。

 繰り返しますが「知られては国が揺らぐ」秘密というのはごくわずかです。それ以外の「秘密」は、「国が揺らぐ」ような性質のものではありません。
 一方、知られることで「政府・政権が揺らぐ」秘密はもっと多いかもしれません。しかしそれは、法律で保護すべきものでは全くありません。法律が国民の権利を制限してまでも保護できることは、あくまでも国や社会の公共の福祉に影響を与えるものに限定されます。「政府」も「政権」も、いくら潰れようが国民がいる限り作り直せるものであり、「国」の利益・存続と「政府」「政権」の利益・存続はイコールでは全くありません。真実によって政府や政権が崩壊するのは、民主主義にとってきわめて健全なことです。 この健全な流れを阻害するのが今の秘密保護法案であり、政府や政権にある人たちは、自分たちこそ国益であり、自分たちの崩壊は国の崩壊であると勘違いしているように思えます。


B現行法では不十分か?

 現行法では秘密が守れないから秘密保護法が必要、という議論もあります。しかし、秘密保護法案は現行法では対処できない問題があり、被害が発生しているからそれへの対策のために出された、というものではありません。
 現行法制下でも、自衛隊に関する資料は国会議員が請求しても「黒塗り」にされることが多くあります。「防衛秘密」は特定秘密に先駆けて設定されており、極めて厳しい水準となっています。他方でこの間、防衛や警察の分野でも情報流出事件が起きています。しかしその流出の形は、信頼関係を持った相手への提供(スパイあるいは癒着)、情報管理のずさんさからくる流出(ファイル共有ソフトなど)、不正行為に対する内部告発などです。しかし前二者は特定秘密保護法で防ぎえるものではありません。3つ目は防げるかもしれませんが、秘密保護法では秘密を守りつつ内部告発する制度が整備されていません。これでは不正そのものを覆い隠す結果にしかなりません。

 現行法制では隠然としかできないが、秘密保護法化では公然とできる、というものはあります。「適性評価」の名のもとに行われる人権侵害の身元調査・周辺調査や、個人や団体の監視などです。自衛隊の「情報保全隊」が反戦運動を監視していたり、イスラム教の施設を「テロとの関係の可能性あり」と監視していたりということがしんぶん赤旗の調査などで明らかになっており、このことは国会でも取り上げられましたが、政府はこの事実関係を明確にしていません。行っていると認めることができないからです。しかし秘密保護法案が通れば、これらのことは特定秘密指定の保護のもとで堂々と行うことができるようになります。
 現行法制で対処が難しいと言われていることとしては、「外国政府から秘密を要請されている事項」の扱いであると言われていますが、これも特定秘密保護法という方法を取らずとも、公務員法改正など現行法制の延長で対処可能です。
 私は、現行の法制度下での「秘密保持」の問題としては、個人情報保護についてはまだまだ不十分であると思います。暴力団対策を担当する警察官の名前など本人や家族を脅迫や買収から守るための、「人」を守る機密はより厳しくてもよいと思いますし、流出させたり、それを行わせようという人物に対しては厳罰をもって処するもやむを得ないと思います。しかしそれは刑法や公務員法、個人情報保護法などで行うべきものです。
 それ以外の「組織のための」機密保持は、あくまでもその組織の内部規律の問題であり、その組織の責任を以て管理し、流出時の責任や処分もその組織の内部規律(公務員ならば国家公務員法など)で行うべきものであると考えます。

C処罰は杞憂?

 たしかに危険性はあるだろう、だが現実にすべての国民を政府が監視するなんてできない、国民の自由が奪われるなど杞憂に過ぎない、という人もいます。
 現実的に、全国民を監視して次々と摘発する、などということはできないし、あり得ないでしょう。しかしだからこそ、行政の恣意的運用を招くことになります。全部の国民を監視できないから、さしあたり「目立つところ」を取りしまることになるでしょう。政党や運動団体、その構成員に処罰の刃が向けられることになるのではないでしょうか。
 そして「目立つところ」がやられた後には、2つの問題が起きます。まず、「目立たないように」と言論や活動が委縮し、国が誤りを犯そうとも声を上げることができない無力状態に、国民が追い込まれることになります。それは政府の誤りを何重にも増幅することになり、国の存亡に重大な結果を招きます。
 もう一つは、「目立つところ」がなくなれば、それで摘発はおしまいとはならず、残ったところからさらに「目立つところ」が見出され、刃が向けられるということです。当初は共産主義者や無政府主義者を取り締まる法律だった「治安維持法」が、共産党や無産市民運動の壊滅後は社民主義や自由主義にその矛先を変え、さらに政府に対して右側からものをいう右翼団体や政治的意図のない宗教にまで、弾圧が広がっていった歴史に思いを致すべきです。

Dそれでも秘密保護法が必要というのなら

 それでもやはり秘密保護法が必要である、というのであれば、小手先の修正ではなく換骨奪胎こそが必要であると思います。
 私はもちろん「廃案」の立場ですが、あえて秘密保護法を換骨奪胎した修正を行うのであればどういうものかを10項目(足りないですが)列挙し、改めて現法案の問題点を明らかにしたいと思います。

 【もし秘密保護法案を『修正』するならば】

 1)法案の趣旨は、行政上秘密を要することがあると認めたうえで、その乱用を防ぎ適正な管理を行うための法律であるとし、秘密保護についての行政の責任を明確にする。

 2)秘密の範囲は安全保障と外交に限定し、テロ対策は安全保障に組み込み、「特定有害行為」はなくす。また、現行法上の「防衛秘密」規定は廃止する。秘密指定の基準を厳格化し、「秘密にしてはならないもの」も明示する。

 3)秘密の指定を更新する場合は国会の委員会ないしは第三者機関の監査を受けなければならない。個人情報を除きいかなる理由があっても30年を超えて秘密に指定することはできない。また行政機関はそれらの機関の求めに応じて特定機密を提供しなければならない。行政機関はそれらの審議を秘密会とすることのみ求めることができる。

 4)特定秘密に関しても、公文書管理法の適用を受けることを明示したうえで、秘密解除後5年間の保存を義務付ける。

 5)行政機関は特定秘密を扱うものに対し、特定秘密の範囲を具体的に説明し、特定秘密保護法の対象であることを知らせて秘密保持の同意を得なければならない。また行政機関として秘密保持のための教育や訓練を行わなければならない。これを適正評価に代える。

 6)行政機関以外からの特定秘密の解除請求およびその手続きを法律に明示する。個人情報は個人のもの、その他の情報は全国民のものであることを明記する。

 7)「教唆」「扇動」「共謀」の処罰規定は削除、「管理を害する行為」の処罰規定も削除。その他の処罰規定も、具体的な被害・損害を明示あるいは合理的に予測できる場合に限り適用されるものとする。具体的な被害が発生しないと見込まれる流出は公務員の守秘義務違反等で対応する。スパイへの重罰規定も公務員法等で明記し、地位と権限に比例して罰則も強くなるものにする。

 8)特定秘密にかかわる刑事・民事裁判への特定秘密の提供ルールを明示し、合理的に被害や損害を予測できる場合を除き、拒むことができないものとする。

 9)独立した第三者機関を設置し、特定秘密の監査と、不適正運用に対する内部告発や国民からの秘密解除・開示請求について調査、決定を行う。

 10)秘密保護に関係して被害が発生した場合の被害救済規定を定め、被害者の救済と再発防止策を行政機関に課す。
posted by 向川まさひで at 03:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 政策・主張 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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