6月議会は課題があまりにも多く、その後すぐに参議院選挙に突入したため、
十分にまとめることができませんでしたが、ひとまず辞職勧告決議案についての
報告をしたいと思います。
6月13日、議会開会日において、「国庫交付金にかかる虚偽報告等調査特別委員会」の報告が行われ、
それに関して私は市長辞職勧告決議案を提出しました。
委員会での調査を通じて、市長公印の管理が不適切であったこと、市長決済すべき書類が部長決済で行われていたこと、問題となった事業の遅れが市長や関係者の間で正しく把握されていなかったことなどが明らかになりました。今回の事件は市役所の体質的問題であり、再発防止に向け組織的改革が必要であることが複数の委員から指摘されています。また、当初、市議会に対して虚偽報告の事実を説明していなかったことについても、委員会に置いて「問題を隠ぺいしようという意思があったと思われてもしょうがないのではないか」と厳しい追及が行われました。
市は、再発防止策として職員への法令順守の徹底、市が行う事業の進捗管理を行う部署や会議の設置などを打ち出しました。
私は「今回の事件は現場とトップ(市長)との間の意思疎通が十分でなかったことが問題を大きくしている。この点については市長・副市長も反省をすべきである」と指摘しました。また国に払った加算金について、市長・副市長および職員で弁済する方針を示しました。これについても、私は責任の所在を明確にし、また先々の先例にするとともに訴訟リスクを軽減するために、地方自治法234条に基づく賠償命令の手続きを行うべきであると追求しました。しかし、市側はその方向ではなく「自主的な補填」ということになりました。
こうした対応では、市政の刷新は難しい。また、行政のゆるみに対しては市長の責任を明確にしなければならないと考え、辞職勧告決議案を提出しました。「不信任案を出すべきでは」という意見もありましたが、不信任案は選挙による市民の信託を覆す強いものであり、現状、市長が自ら不正を行い、あるいは不正を指示してその職を汚したということが証明されていない状況では、不信任案は不適当と考え、市長に自らの進退を問う辞職勧告決議案としました。
辞職勧告決議は、法的拘束力はありませんが、長の責任を厳しく追及し、辞職を求めるものです。今回は市長が自ら不正を起こしたり、指示をした事件ではありませんが、行政の長として、事件の発生やその後の対応への責任はきわめて重いとし、決議案を動議にて提出しました。維新の森本議員から「動議賛成」をかけていただき、動議は成立となりました。
合計6人が討論し、賛成の立場からは「市長の資質を問う」「27年12月議会時での説明が重大な問題だ」など、また反対の立場からは「辞職を求める必要はない」「司法の経過を見守るべき」などという討論がおこなわれました。
採決の結果、賛成5、反対10、欠席・棄権2の賛成少数で否決となりました。
勧告案の否決で、議会として明確な意思表示はできませんでしたが、引き続き市長が約束した再発防止や行政の見直しについて現実に行われるものかどうか、厳しくチェックしていきます。
また、2人の議員が行ったこの件に関する「刑事告発」についても、その動向を注視していきます。
奈良放送での報道内容です
最後に、辞職勧告決議案の全文を掲載します。
市道本郷大中線街路事業および都市再生整備事業において、本市が虚偽の報告によって国庫交付金の不正な受給を受けていた事件は、市政に対する市民の信頼を大きく損ない、また交付金返還、加算金支払いとして市財政に負担をきたす事態となっている。
市議会は28年3月議会において「国庫交付金にかかる虚偽報告等に関する調査特別委員会」を設置し、5月27日まで集中した調査を行ってきた。委員会での調査を通して、公印の不適正な管理、市長決済されるべき書類が部長決済になっていた決済手順の不徹底、金銭支払い時の点検の不備など、本市行政執行の深刻なゆるみが明らかになっている。こうした行政のゆるみが、虚偽報告が行われる土壌となっていたことは明らかである。
また、事業進捗状況の管理体制が現場任せであったこと、市長と幹部職員の間の意思疎通が不十分であったことが、事態を悪化させた原因であることも判明している。これらの問題により、今回の事件の発端となった2事業の遅滞発生時、事業未竣工の判明時など、事件に至るまでの重要な場面において市がすべき対応を誤ることとなっている。今回の事件は、単なる職員の不祥事ではなく、本市行政の体質的・体制的問題が表面化したものであり、行政が適正に運用されていれば回避し得た事件であると考える。
市当局に対しては、この事件を徹底的に教訓とし、綱紀粛正、体制の改革など刷新をすすめ、信頼回復と再発防止に努めることを強く求めるものである。しかしながら、そのかじ取りを吉田市長に求めることには重大な疑念が生じている。
そもそも今回の事件が浮き彫りにした行政執行のゆるみや体制上の問題は、12年間の吉田市政の下で形成あるいは存続してきたものであり、職員との意思疎通の問題も含め、吉田市長も責任を免れない。
また、27年12月議会において交付金返還・加算金支払いを含む補正予算案を提出するにあたり、市長はすでに虚偽報告の事実を認識していたにもかかわらず、議会への説明においてはそれを省いて、専らやむなき未竣工の事案として議会に説明し、成立を求めた。その後近畿地方整備局からの返還命令が決定した際にも、28年2月1日に関係職員に懲戒処分を行うにあたっても、虚偽報告の事実を含む事件の全容を議会に報告してこなかった。市長のこうした対応には、議会を欺き、事件の隠蔽や矮小化の意図を持っていた疑いをぬぐうことはできない。
事件によって生じた損害に対する関係者の責任追及にあたっても、地方自治法など法的手順にのっとり、経緯や基準を明らかにしたうえで行うのではなく、内部的な協議により関係者間で加算金の補填を定め、それを以て市の損害は実質的に解消したものとして決着としようとしている。このようなやり方では責任を不明瞭にし、将来に悪しき前例ともなりかねないものであり、市民の理解は得られない。
以上のことから、市議会としては、現在の吉田市政の継続の下では、市政に対する市民の信頼回復をすすめていくことは困難であると考える。吉田誠克市長に対し辞職を勧告するものである。