貧困・格差の解決に向けて@の続きです。
A 働くルールの徹底。労働時間規制の強化、最低賃金引き上げ、同一労働同一賃金原則をこの項は、前項の
「社会保障の充実」が行われることが前提となっています。
現在の日本では、失業者や不安定雇用が増える一方で、心身を損なうほどの
過密労働、長時間労働を余儀なくされている人も増えています。
まず、この点を是正すべきです。企業にとって「少数の労働者を長時間働かせるより
多数の労働者を雇ったほうがメリットがある」という体制をつくることが
必要です。それにより、雇用も増え、働く人の健康も守れます。
労働法制の面で、日本が他の先進国と比べて特徴的なのは、
労働時間の規制が大変ゆるいことです。
他の国では、一日、一週間の労働時間だけでなく、年間総労働時間に対しても
規制が強いです。交代制勤務の職種では
勤務と勤務の間の時間を12時間以上にするように定められていることろもあります。
日本は、国際的な労働に関する条約であるILO条約のうち、労働時間に関する
条約は一つも批准していません。サービス残業に対するさらなる規制強化、そのほかの残業についても
賃金割増率引き上げなどで、現場の意識が「あたりまえ」ではなく
「例外」になるように変えていくべきです。看護など交代制勤務では、健康を守るためにも勤務間の休息時間確保を
定め、それに見合った人員配置を目指すことが必要です。
最低賃金引き上げは、なによりも
最低生活費を考慮すべきです。
かつては「中卒女子初任給」が基準であった日本の最低賃金は、
いつしか「主婦パート」や「学生アルバイト」など、
ほかに収入がある人の
補助的勤務が基準になってしまいました。しかし現実には
この最低賃金で生活を立てなければならない人が増えていることが
ワーキングプアを増やし、貧困の矛盾を大きくしています。
最低生活費を前提にした最低賃金に戻すべきです。
最低賃金引き上げは、企業経営を圧迫しかえって雇用を失わせると
いう指摘もあります。たしかに、貧困問題の解決を最低賃金
引き上げを中心で行おうとすればそうなるでしょう。しかし
前項のように社会保障の充実を行い、医療や教育、子育てなどの
「社会的支出」やそれに備えた貯蓄の必要性が低下すれば
最低賃金は必ずしも大幅に上げなくとも、最低生計費を賄える
のではと思います。
最低賃金引き上げが、コスト増をもたらし、インフレにつながる
という指摘に対しては、私はむしろ、国内で払うべきコストを払わず
ダンピング的に儲けるというありかたそのものが、日本の経済の
デフレ+円高という状況につながっていると思います。
同一労働同一賃金原則は、同じ仕事をしていても、雇用契約の違いで
賃金や待遇に格差があることを肯定している今の日本の風土を
変えるうえで重要です。
今の日本の企業風土では、「正社員」と「パート」「派遣」「非正規」などが
一種の「身分」のように考えられているところがあります。
「パート」だから、仕事内容が同じでも給与の時間単価も待遇も低くて
当たり前、そういう意識があると思います。明確に、担当業務が
分かれているならば一定合理的ですが、人件費を抑制する中で
「パートの戦力化(正社員の業務を担当させる)」を図っている
企業が多いと思います。
また、製造業の現場では、「社員」にはマスクを給付するが、「派遣」
の人は自弁させる、休憩スペースも格差をつけるという差別的
待遇が当たり前のこととして行われていたケースもあります。
日本共産党は、雇用問題に対しては
「雇用は《正社員》があたりまえに」というスローガンを掲げていますが、
実は私はやや違和感を持っています。
「正社員」という言葉には、会社に対して強いメンバーシップを持ち、
会社がその人の生活を丸抱えにして、恩恵を受ける代わりに、
会社のためにはサービス残業も、場合によっては不法行為も惜しまない、
プライベートも二の次にする、というような働き方のイメージがあるからです。
こうした「正社員」の在り方も変えなければなりません。
同一労働同一賃金原則を徹底し、目指すところとしては
正社員と非正社員の違いは、単に契約の違い、勤務時間や期間の違いで、
時間あたりの賃金も基本的な待遇も均等、というふうにできれば、
日本の企業風土は大きく変わると思います。
それはパート・非正社員の待遇改善というだけでなく、「正社員」の人たちも
雇用保護と引き換えでの、会社に対する過度な忠誠心やメンバーシップの
強要から解放され、より人間らしく働ける道が開けると思います。(※)
目指すスローガンは
「雇用は《正社員》があたりまえ」よりも
「雇用は《正規雇用》があたりまえ」のほうが良いとは思いますが、
「正規雇用」という言葉はまだまだ一般になじみがない言葉ですので
やむを得ないことかとは思います。
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