尊敬する人たちのこと、の続きです。
【ロバート・オーウェン】
18世紀から19世紀にかけてのイギリスの企業家であり、
社会主義思想家でもあった人物です。
中流家庭に生まれ、7歳で小学校の教師役をする(当時のイギリスの
小学校は、教師が少なく、頭のよい年長の子に教師役をさせていた
そうです)など、大変秀才だったようですが、10歳から働き始め、
28歳で商売に成功し、工場経営者になります。
当時のイギリスは産業革命真っ最中の資本主義勃興期を迎えており、
発展の影で、労働者階級は劣悪な環境におかれ、児童労働が横行し
子どもも含めて心身の荒廃が進んでいました。
当時のイギリスの考え方の主流は、
それらの人々が貧苦に陥るのは
道徳的退廃ゆえであり、刑罰や説教を行うべきであると考えられていました。
心ある人々が慈善活動などを行い、救済の運動もおこりましたが、
根源的な問題である労働者の境遇を変えようという考えには至りませんでした。
オーウェンも、このときは社会主義というよりも啓蒙主義・道徳主義の
立場でしたが、
労働者を罰したり「真面目に働け」とお説教するのでは
なく、環境を変えることが必要であると考えました。
オーウェンは児童労働をとりやめ、工場の近くに幼稚園・小学校を作り
労働者階級の子どもたちを通わせます。労働者から給料を取り返す手段で
あった工場内の売店を、労働者に良い品物を安価で提供するものに変えます。こうした取り組みは、最初は「会社を潰すに違いない」と嘲笑されたそうですが
労働者は良く働くようになり、生産性がむしろ向上し、成功します。
オーウェンは特に子どもの長時間労働が心身を損なうとの考えから、子どもの
労働の制限を国に主張し、一定の成果を得ます。
オーウェンはさらに考え方を進め、すべての人が人間らしく働き、生活する
協同の村を作ろうとしますが、これは失敗し、財産を失ってしまいます。
その後は労働組合運動や協同組合の育成に力をつくし、87歳で亡くなります。
オーウェンの考え方を受け継いだ人々が、のちにイギリスで協同組合や
労働組合を発展させ、現在のイギリス労働党につながっているといわれます。
また、世界の生活協同組合にも、オーウェンの思想が生きています。
文献において「空想的社会主義者」と言われたことで、オーウェンを
否定的に見る考え方もありますが、実際は社会主義の先駆者としてマルクスも
高く評価しています。
解決手段においては、たしかに人の良心に頼りすぎている部分はありますが、
資本主義社会が生み出している問題を、表層ではなく本質をはっきりと見極めたという点を、私は大変尊敬しています。
生き方という点でも、自ら資本主義社会での成功者でありながら、そうではない
多数の人々を蔑んだり、あわれみの対象としてみるのではなく、同じ人間として
人間らしい暮らしができる社会を作ろうとしたという姿勢に敬意を持っています。
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posted by 向川まさひで at 23:01|
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